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2012年9月 2日 (日)

トンデモ本というビジネス

『脳の仕組み ~あなたの脳は攻撃されてない』の続編記事です。


本物の「軍事機密」ならどうして公開できたんですか?

 前回の記事で、書籍『電子洗脳 あなたの脳も攻撃されている』の内容が、現在の科学水準に照らして、どうにも説明不可能であることを解説したつもりですが。
 それでもやっぱり「お前(阿檀)が知らないだけで、軍の技術は民生の技術からは予測できないところまで進んでいるんだ」と思う人もいるかもしれないです。そういう方に聞きたいんですが、このニック・ベギーチ博士というのは、そこまで極秘にされた技術をどうして公開できたんですかね? 
 《Amazon》の「なか見検索」をみると、この本は2006年にアメリカで出版され、2011年に日本で翻訳されています。もしこのセンセーショナルな内容が本当なら、この5年間にほとんど話題にならなかったのはなぜなんでしょう?
「軍事機密だから、広まらないよう圧力をかけられた」
とか言われそうなんですが。もし本当に「軍事機密」を明らかにするつもりなら、疑う余地もないほど緻密に持ち出すでしょうね。
 書評を見ると、技術の「内容」に触れたものは見つからず、逆に「技術的内容が記されていない」というものには当たるもので、今のところ読む気がわきません。
(《Amazon》アルチザン氏のレビューより)
内容も一見、緻密に調べてあるように見える。が、肝心のところはスカスカである。
(中略)
記述されている技術とタイトルどおりのことをしようとする技術に半端じゃないギャップがある。

(《ブクログ》mindcraft氏のレビューより) この本もタイトルとは別に、具体的にはなにひとつうまくいっていない。周囲の技術、音で不快にする、低周波による脳の引き込みでアルファ状態にする、などの技術を紹介して、あたかも意識操作ができそうな雰囲気を醸し出しているだけ。
技術知識のない人はコロッとダマされるようだ。技術論を語るなら急がば回れで、電磁波の勉強くらいは本3冊程度なので、やるべきだ。

(《ブクログ》junjungogo氏のレビューより)
記憶は脳細胞のネットワークにより構築されているわけで、このネットワークは個々人で異なるのではないかと思う。だから、同じように理解しているように見える知識であっても、脳のネットワークとしては別物と思われる。それを電磁波を当てることで構築できるとは思えない。


トンデモ本というビジネス

 では、どうしてこういう「スカスカ」な本が出版されるのでしょうか。
 端的にいえば、儲けになるからです。ノストラダムスの大予言しかり、マヤの予言しかり、不安を煽る本を見ると手にとってしまう人というのはいるもので、そういう人の財布をアテにこの種の本は出版されます。一部の人は、この種の本を「トンデモ本」と呼んでいます。

 『電子洗脳 あなたの脳も攻撃されている』を出版している成甲書房は、さまざまな本を出版しているようですが
・異次元ワールドとの遭遇
・ビヨンド・コンスピラシー陰謀を超えて 最終段階に突入した「300人委員会」世界支配計画
・三島由紀夫の【最新】霊界からの大予言 神々が明かす日本崩壊と地球崩壊〈脱出の告示〉
・ヒトラー第二の書―自身が刊行を禁じた「続・わが闘争」
・サイキック・パワー 宇宙の神秘エネルギーとつながる方法
などの本も出版している出版社です。(これはかなりアヤシイものを拾ってますので、偏りなく全貌を見たい方は出版社のサイトを見るか、Amazonで「成甲書房」と検索してください。


嘘の本を売っても逮捕はされない

 偽薬を売ると逮捕されます。腐った料理を出したレストランは営業停止になります。けれど、有害な嘘を書いた本を売っても、法的な罪には問われません。これは憲法によって「言論の自由」が保障されているからです。
 歴史における言論の弾圧への反省から、日本の憲法は「言論の自由」を「嘘本が跋扈する危険」よりも優先することにしたわけです。


サイキックパワーを信じても実害はないが

 あなたがもしサイキックパワーを信じても、周囲の人からちょっと「変わった人だ」と言われる程度で済むでしょう。
 しかし、『電子洗脳 あなたの脳も攻撃されている』を読んだ人が、幻覚を見たときに、「ああ、これが電子洗脳か」と、医者に行かずに放置してしまったら、症状を初期で抑える機会を失ってしまうことになります。あるいは、統合失調症の患者さんに
「電子洗脳だそうですから、電波がとまるまで、アナタは直りません」
と言い出すのも困ります。患者さんが、受診や服薬を止めてしまうのも困りますし、患者さんの家族ともトラブルになるでしょう。

 嘘を書いた本を売った側は、罪には問われないのですから。読む側が、その情報が信じるに値するものかどうか、他の本・他の知識に照らして、判断しなければならないのです。

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